HELL
緊急手術から3日経ちましたが、兄はまだ意識不明のままです。
明日、ようやく担当医にお会いして現在の状況が説明していただけることになりましたが…。
今年のN展に挑戦するための作業も滞っています。
幸い七宝は材料さえあれば、1週間の突貫作業でも何とか作品を完成させることはできますので…まだ時間的に余裕があります。
ただ…兄が倒れたことで、作品の内容は大きく変わることらなるでしょう。
私は先週まで考えていたプランを捨てました。
私は、次の作品はできれば軽やかさと流麗さを表現したかったのです。
前回の作品が重く、グツグツと煮たぎっているような作品でしたので。
しかし…作品とは、どうしてもその時の作者自身を映す鏡です。
今の私は重い作品しか作れないと思います。
それと…作品というものは、「何かの力によって作らせてもらえる」ものでもあります。
もちろん、作者の強い意志で覚悟をもって「作り続ける」ことができなければ、完成はしないのですが…作者個人の力だけでない、何かの導きというものが確実にあります。
思えば、今年の春に日工会展に出品した作品に、私は「ぱらいそ」というタイトルを付けました。
「ぱらいそ」とは、隠れキリシタンの用語でPARADISE、天国を意味します。
そして今、私の脳裏に浮かんでいるキーワードは「地獄」です。
兄の手術の付き添いで病院の家族待機室に7時間籠もりましたが、その時ずっと考えていたのは「ああ、これから地獄になるな」ということでした。
そして家に戻り、兄が倒れる前に自室の冷房を付けっぱなしていたので…数年ぶりに兄の部屋に入り、エアコンの電源を切ったのですが…。
兄の部屋を見て「これからが地獄なのではなく、今までもずっと地獄だったんだ」と気付きました。
その後、ふとテレビを点けてみると…お盆だからなのでしょうか、たまたま画面の中でやっていたアニメが「地獄巡り」をしていました。
シンクロニシティ…こういう時、キーワードが繋がると「天啓」を感じます。
つまり私は「地獄」をテーマに作品を作らなくてはいけないのです。
軽やかさや流麗さに憧れを持っても、私の作品は今後、どんどん重くなっていく。
もっともっと重く、鑑賞者に一撃でゾッとさせる作品を目指さないといけない。
そういう流れに自分がハマッてしまっていることを自覚しました。